Column
法律コラム
Twitterでなりすまし被害に遭った時の対処法~警察に相談すればいい
1. Twitterの「なりすまし」とは
2. Twitterのなりすましは警察に逮捕されるか
3. なりすましTwitterアカウントの削除方法
4. なりすまし犯の特定は警察に相談すれば良い?
5. 犯人特定~法的措置の流れ
6. まとめ
Twitterはメールアドレスさえあればアカウント開設が可能なので、自分ではない人になりすますこともできます。
中には、なりすましを行って他人の名誉を傷つけたり、盗撮写真や転載画像を掲載したりする悪質なアカウントも。
SNSでのなりすましは、警察に逮捕された事例も存在する犯罪行為です。
今回は、Twitterのなりすましがどんな犯罪に当たるのか、またなりすまし被害に遭ったらどんな対応をすれば良いのかをお伝えしていきます。
Twitterの「なりすまし」とは
Twitterの「なりすまし」とは、自分以外の他者のアカウントを模倣したり、他者と誤認させるような投稿をしたりするアカウントのことです。
Twitterは実名・匿名(ハンドルネーム)どちらでも使用することができ、投稿内容も文章・写真・動画と幅広いので、なりすましアカウントの目的は多岐に渡ります。
Twitterの規約では、なりすましに関するポリシーとして以下のように定めています。
なりすまし行為はTwitterルールで禁止されています。混同や誤解を招きかねない形で特定の他人、ブランド、または組織になりすますTwitterアカウントは、なりすましに関するTwitterのポリシーに沿って永久凍結されることがあります。
出典:https://help.twitter.com/ja/rules-and-policies/twitter-impersonation-policy
つまり、なりすましアカウントは、報告することでTwitterの運営を通して削除または使用を止めることができます。
なりすましを受けた当事者、または当該当事者の法的な資格を有する代理人は、なりすましアカウントを報告することが可能です。
当事者ではない第三者であっても、「なりすましである可能性がある」ことを報告することができます。
ただし、Twitterのポリシーには例外があり、以下の場合には削除や凍結の対象にはなりません。
なりすましに関するポリシー違反にならないケース:
・名前が同じでも、それ以外に共通点がない
・名前が似ている個人やブランドと、縁故や関連がないことがプロフィールに明記されている
Twitterのなりすましは警察に逮捕されるか
Twitterのなりすましは、犯罪になる場合も、そうでない場合もあります。
ここでは、なりすましが罪に問われるケースや、それはどんな罪にあたるのかを解説していきます。
なりすましが罪に問われるケース
Twitterのなりすましは、投稿内容によっては犯罪に問うことができます。
Twitterのなりすましで警察に逮捕される(刑事告発できる)のは「名誉毀損」「侮辱」のみです。
その他に、Twitterのなりすましによって侵害される可能性がある「プライバシー侵害」「肖像権侵害」は民事訴訟となり、警察に逮捕してもらうことはできません。
民事に該当する場合は、警察に逮捕してもらう代わりに訴訟を起こして、損害賠償や慰謝料の請求をすることができます。
・名誉毀損
名誉毀損とは、なりすました相手の名誉を傷つけるような投稿をすることです。
例えば「Aさんはお金を横領している」などの投稿が挙げられますが、Aさんになりすましたアカウントで「私はお金を横領している」と投稿すれば、同様にAさんの名誉を毀損したことになります。
ちなみに、投稿の内容が事実であっても嘘であっても、名誉毀損となります。
・侮辱
侮辱は名誉毀損と似ていますが、具体的な事実を摘示せずに人を侮辱した場合に問われる犯罪です。
「具体的な事実」とは、先に挙げたような「お金を横領している」や、「不倫している」「前科がある」「薬物乱用者だ」といった、証拠さえ提示すれば事実を示せること(実際に証拠があるかどうかや、嘘か本当かは問わない)です。
一方、「侮辱」とは、「チビ」「デブ」「馬鹿」といった、事実を示さない悪口のことを言います。
また、どこの誰のことを言っているのかを、第三者が容易に知ることが出来る程度に特定されている必要があります。
Twitterのなりすましの場合、例えばAさんになりすまして「私は無能」と投稿することも、Aさんのふりをして「上司の〇〇は無能」という投稿をすることも、両方が侮辱にあたります。
・プライバシー侵害
プライバシー侵害は、なりすましアカウントに、個人情報や人に明かしたくないことを公開されてしまった場合に該当します。
プライバシーの定義とは、「私生活上の事実」「これまで公開されていなかった」「公開されて被害者が不快に感じた」の3つの条件を満たすもののこと。
住所や電話番号などの他、勤め先や年収、職歴、交際歴、病歴など、何でも「人に知られたくないことで、公開されて不快に感じた」ならばプライバシーの侵害と言えます。
・肖像権侵害
肖像権の侵害とは、無断で自分の顔または体を撮影されたり、公表されたりした場合に該当します。
例えば、盗撮された写真を投稿されたり、自分が写っている写真を転載されたりしたときです。また、写真が自分で撮ったものであれば、著作権の侵害にもなりえます。
ただし、顔がぼやけている、体の一部だけが写っているなどで人物の特定が容易でない場合には、肖像権の侵害に当たらない場合も。
イベント会場など、撮影されることが予測できる場所で撮られた写真も、肖像権の侵害が認められないこともあります。
なりすましで逮捕された事例
TwitterなどのSNSを通じた犯罪は歴史が浅いですが、なりすましで警察に逮捕された事例もあります。
2017年、SNS(Twitterかどうかは公表されていません)で知人女性になりすまし、援助交際を募る嘘の投稿を行った男性が「名誉毀損」の容疑で逮捕されました。
また、こちらは逮捕に至ったかどうかは定かではありませんが、2015年1月にはFacebookでなりすましアカウントを作られた女性が情報開示の請求を行い、それが受け入れられて犯人の特定に至りました。
SNSでのなりすましが逮捕に至った実例は豊富にあるという訳ではありませんが、Twitterのなりすまし犯を警察に逮捕してもらえる可能性は十分にあります。
※参照:
https://www.asahi.com/articles/ASK7B4D05K7BPTJB010.html
刑罰・賠償の目安
名誉毀損罪・侮辱罪の刑罰は以下のように定められています。
名誉毀損罪:3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
侮辱罪:拘留又は科料
Twitterのなりすましで刑事告発して犯人が逮捕された場合は、上記の範囲の罰則が課されることになります。
民事訴訟を起こした場合、賠償金・慰謝料の目安は以下の通りです。
・一般人:10~50万円
・法人:50~100万円
・有名人:100万円~
※具体的事案により額は大きく変わります
上記はあくまで一般的な目安で、なりすましを行なった期間や悪質さ、被害者が負った被害や影響力の大きさなどで金額は大幅に変わります。
一般人であっても、裸の写真を公開されたなど、悪質で影響が大きい場合には、数百万円以上の慰謝料を請求できる場合もあります。
なりすましTwitterアカウントの削除方法
Twitterで自分のなりすましアカウントを見つけた場合、Twitterの運営に報告することで削除依頼ができます。
1.Twiiterのヘルプセンターから「なりすましアカウントを報告する」ページを開く
https://help.twitter.com/forms/impersonation
2.「アカウントが私、または私の知り合いのふりをしています。」を選択
3.「なりすましにあっています」を選択
4.なりすましアカウントのユーザー名、自分のメールアドレス、付記事項を記入
5.下部の「送信する」ボタンを押す
ただし、こちらはあくまでもTwitterの運営への報告なので、削除や凍結要請はできますが警察への通報にはなりません。
警察に通報し、刑事罰に問いたい場合には、運営への報告の前にログやスクリーンショットを保存し、警察署で相談しましょう。
なりすまし犯の特定は警察に相談すれば良い?
Twitterのなりすましは、もちろん警察に相談することが可能です。
上記で解説した刑事罰に相当する場合には、立件して逮捕に向けて動いてもらったり、そうでない場合も削除要請や民事訴訟に向けてのサポートを受けたりすることができます。
警察に相談する場合は、最寄りの交番や警察署に直接行くのではなく、まずはネットで「サイバー犯罪窓口」に相談し、どのような対応ができるのか、どんな証拠が必要なのかを確認することをおすすめします。
被害に緊急性がある、被害が深刻である、犯人を逮捕してほしいといった場合には警察に相談しましょう。
もう一つの相談窓口として、弁護士という選択肢もあります。
こちらは、民事訴訟を起こして賠償金や慰謝料を請求したい場合におすすめです。
弁護士は犯人を逮捕することはできませんが、被害に緊急性がなくても確実に動いてくれますし、犯人特定や訴訟に必要な手続きを一任することができます。
相談は弁護士がおすすめ
警察にTwitterのなりすましを相談する場合、証拠の用意や、犯人との示談・裁判の手続きなどは自分で行わなければいけません。
まず弁護士に相談すれば、これらの手続きを一任でき、犯人特定の手続きも代理で行なってもらうことができます。
また、警察は訴訟に至るための捜査や逮捕、弁護士は裁判が専門分野です。
SNSを通じた犯罪は、現在のところ刑事訴訟になることはあまり多くありません。
なりすましの法的措置は、最終的に民事訴訟になることが多いので、最初から弁護士に相談した方がスムーズです。
犯人特定~法的措置の流れ
Twitterのなりすまし犯人を見つけるには、Twitterの運営元に情報開示請求を行い、プロバイダに問い合わせをして特定するという流れになります。
犯人特定にはIPアドレスが必要ですが、各プロバイダがIPアドレスを保存している期間は3~6ヶ月程度です。
また、Twitterが保有しているのは、アカウント開設時のIPアドレスやタイムスタンプのみで、投稿時のものは保有していません。
なりすまし犯を特定するには、アカウント開設から3~6ヶ月以内に手続きをする必要があります。
・IPアドレスとプロバイダの特定
Twitterにアカウントを作成したユーザーの情報は、Twitterの運営元である「Twitter Inc」が管理しています。
Twitterには日本法人として「Twitter Japan 株式会社」がありますが、こちらは発信者情報の開示権限を有していないため、開示請求はアメリカの「Twitter Inc」に行います。
Twitterへの情報開示請求は地方裁判所を通して行い、請求が認められると犯人のIPアドレスとプロバイダ情報が入手できます。
・損害賠償請求・刑事告発
犯人が利用したプロバイダが判明したら、プロバイダと交渉して犯人の個人情報を開示してもらいます。
ただし、プロバイダ側の個人情報保護ポリシーにより、開示を受けられるかどうかはケースバイケースです。
犯人を特定できたら、損害賠償請求または刑事告発に進むことができます。
犯人を刑事罰に問う場合は、警察で起訴の手続き、民事訴訟の場合は、地方裁判所または簡易裁判所に申し立てを行います。
まとめ
Twitterのなりすましは、投稿内容によっては犯罪となり、警察に逮捕されることがあります。
実際に、SNSのなりすまし被害によって、犯人逮捕に至った実例もあります。
また、犯人に刑罰ではなく賠償を求めたい場合には、民事訴訟を起こすことも可能。
どちらの罪に問えるかは受けた被害の種類によりますが、どちらの場合であってもまずは弁護士に相談すると、手続きを一任できスムーズに解決できます。