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法律コラム

ネットでの悪口はどこからが犯罪?

「ネット上に悪口を書き込まれた」あるいは「軽い気持ちで悪口を書き込んでしまったが、犯罪になるのか」という相談が急増しています。
ネット上の悪口が問題になる原因としては、匿名性の高さゆえの気軽さや、多くの人の目に触れて拡散性が高いことが挙げられます。
今回は、ネットに悪口を書き込む人の心理や、悪口が犯罪になるボーダーラインについて解説。
ネット上に悪口を書き込まれてしまった場合の、対処方法や弁護士費用についてもお伝えします。

ネットでの悪口トラブルが急増中

インターネットは便利な反面、法整備が追いついていないことから、権利侵害の温床となっている実情があります。
まずは、ネットでの悪口の相談件数と、またネットで悪口を書いている人の心理状態についてお伝えします。

相談件数が急増

ネットでの悪口による被害は、近年急増しています。
総務省が2020年7月に発表した調査(https://www.soumu.go.jp/main_content/000695577.pdf)によると、令和元年に「違法・有害情報相談センター」に寄せられた相談件数は5,198件。
平成22年には1,337件だったので、9年で約3.9倍にも増えたということになります。
さらに、違法·有害情報相談センターを通さず、警察や弁護士に相談された件数、またどこにも相談せず悩んでいる人の数は、もっと多いと考えられます。

ネットで悪口を書いてしまう心理

ネットで悪口を書く人が多いのには、いくつかの理由があると考えられます。
·相手が匿名で見えづらい
·自分が匿名なので、現実世界では言えないことも書き込みやすい
·多くの人に知られたいという自己顕示欲がある
·現実世界では見つかりにくい小さな不正も、大きな炎上になりがち
ネット上での人格は、現実の自分とは切り離して考えている人も非常に多いです。
相手や自分の顔が見えないことや、実際に声に出して悪口を言うわけではないことから、直接顔を合わせたときには言えないような言葉まで書き込みやすくなってしまいます。
また、炎上に対する「叩き」は、批判する側に正義があり、味方もたくさんいるという自信から、必要以上に攻撃的な言葉を使いがちになります。

ネットでの悪口はどこから犯罪?

例えば「死ね」と書いたら即犯罪であるなど、ネット上の悪口に明確なラインが決まっているわけではありません。
ネットでの悪口は、主に被害者が警察や弁護士に届け出ることで立件されます。
被害者が訴えを起こすかどうか、またその訴えが正当と認められるかどうかが、ネット上の悪口が犯罪になるかどうかのボーダーラインです。
下記でご紹介するような悪口は、刑事上犯罪に当たる、あるいは民事上人の権利を侵害したとして損害賠償責任を負う可能性があります。

名誉毀損

名誉毀損(名誉権の侵害)とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」することをいいます。
内容が本当か嘘かに関わらず、当事者の名誉を傷つけるような悪口をネットに書き込むと、名誉毀損罪になる可能性があります。

権利の侵害

名誉権のほかに、プライバシー権や肖像権の侵害、侮辱などが考えられます。
プライバシー権の侵害は、例えば自宅の住所や名前、電話番号などはもちろん、当事者が知られたくない病歴·職歴·交際歴などの個人情報をネットに書き込まれた場合です。
自分の顔写真などを同意なくネットに掲載された場合、プライバシー権と同時に肖像権の侵害にも該当する可能性があります。
度を越した悪口は、侮辱罪として犯罪になりえます。
名誉毀損と侮辱の違いは、「事実を摘示」するかどうか。
「Aさんは不倫している」といった具体的な事実を挙げたものは名誉毀損ですが、「バカ」「消えろ」といった悪口は侮辱になります。

信用毀損・業務妨害

法人に対する誹謗中傷は、信用毀損や業務妨害になる可能性があります。
信用毀損とは、「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損すること」。
ここでいう信用とは、支払い能力や経済力など、主に経済的な信用を指します。
相手が商売を行なっている場合、その商品の信頼を貶めるような嘘をつくことも、信用に傷をつけることになります。
業務妨害は、意思を制圧したり、嘘の情報により被害者の業務を邪魔すること。
信用毀損と業務妨害の違いは、相手(個人·法人)や商品の「信用」が失われたか、妨害によって「業務」ができなくなったかということです。

損害賠償が発生

「ネット上の悪口のせいで商売の売上が落ちた」「根拠のない噂のせいで内定取り消しにあった」など、被害者に損害が出た場合も、相手の責任を追求できる場合があります。
損害賠償の請求については、犯罪として立件するというより、調停などで示談·和解を目指すことが多いです。

ネットで悪口を書かれたらどう対処する?

最後に、ネット上で悪口を書かれたら、どのように対処すればよいかをお伝えします。

各サイトに削除依頼をする

各サイトの利用規約に反する投稿については、サイト運営に削除依頼をすることで削除できる可能性があります。
SNSや掲示板では、個人·法人に関する風説の流布や過度な攻撃を、利用規約で禁じていることが多いからです。
犯人を逮捕したり損害賠償請求をしたいわけではなく、ただ悪口が消えればいいという場合は、この方法が手っ取り早いでしょう。
ただし、サイトごとに削除判断の基準は違うので、削除申請をしても受理されない可能性はあります。

匿名の相手を特定するには

犯人を逮捕したり、損害賠償で訴えたりしたいのであれば、相手を特定する必要があります。
その場合、裁判所を通じてサイトに「開示請求」を行い、犯人のIPアドレスから個人特定を進めます。
サイトから開示されたIPアドレスを元にプロバイダを特定し、そのプロバイダに利用者情報の開示を求めるという流れです。
開示請求は、被害者本人が行うことも可能ではありますが、個人情報保護の観点から、個人に情報開示がされるケースはほとんどありません。
手続きも難しく時間がかかるため、弁護士などの専門家に依頼して行うのが一般的です。

悪質な投稿は弁護士に相談を

「削除申請をしてもサイト側に受理されない」「削除しても何度も悪口を書き込まれる」といった困った状況に陥ったら、法律の専門家である弁護士に相談しましょう。
弁護士は、「仮処分命令」という効力の高い削除申請をしたり、相手を特定して裁判や示談交渉をすることができます。

解決までにかかる時間

弁護士に相談して、ネットの悪口被害が解決する時間は、ケースバイケースです。
サイトへの削除申請のみなら、最短数時間で終わることもあります。
開示請求を行なって相手を特定する場合、最低2回の裁判手続きを経るため、数ヶ月~半年ほどの長期スパンになることも。
それから示談交渉や裁判を行うと、数年に渡るほど長期化する場合もあります。

相談費用・慰謝料の相場は?

ネットの悪口を弁護士に相談した場合、弁護士費用と慰謝料の相場は以下のようになっています。
·サイトへの削除申請(法的手続きを経ない場合):着手金1万円程度、10万円程度
·任意開示請求:着手金5~10万円、成功報酬10~20万円
·仮処分命令申立:着手金20~40万円、成功報酬10~20万円
·発信者情報開示請求訴訟:着手金20~30万円、成功報酬10~20万円

また、慰謝料の相場は、悪口の悪質度合いや、被害者に与えた被害の程度によって異なります。
·名誉毀損罪:50~100万円
·侮辱罪:5~10万円
·信用毀損罪:5~50万円
·プライバシー侵害:20万~50万円
·著作権侵害:10~100万円
·肖像権侵害:10~400万円

まとめ

ネットの悪口は、被害者が届け出ることで犯罪に問うことができます。
犯罪として立件しない場合でも、サイトへの削除申請で悪口を削除することが可能です。
ネット上の悪口で困っている方や、告訴や慰謝料の請求を考えている方は、まず弁護士に相談することをおすすめいたします。
緊急性が高い場合は、すぐ警察に通報しましょう。

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