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法律コラム

偽計業務妨害罪とは?
トラブルに巻き込まれないために出来ること

偽計業務妨害罪とは、嘘の噂を広めたり、人の勘違いを利用して、他者の業務を邪魔する行為を内容とする犯罪です。
風評で大きな被害が出た例もありますが、その発端はSNSなどの気軽な投稿ということもあります。
インターネットが発達した現代では、誰もが加害者になり得るため、一人ひとりが注意する必要があります。

今回は、偽計業務妨害罪の概要や罰則、トラブルを避ける方法などについてお伝えします。

偽計業務妨害とは

まずは、偽計業務妨害の概要や、威力業務妨害との違いについて知っていきましょう。

偽計業務妨害罪の構成要件

偽計業務妨害罪とは、虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、その業務を妨害すること。
この3つの構成要件について、詳しく解説していきます。

①「虚偽の風説の流布を用いて」

「虚偽の風説」とは、「客観的真実に反する事実を不特定または多数人に伝播させること」。要は、嘘の噂を人に広めることです。

ちなみに、広めた情報が本当のことであれば、不名誉な噂を広めたという点で名誉毀損罪や信用毀損罪になる可能性がありますが、偽計業務妨害罪にはなりません。
また、「不特定または多数人」の具体的な人数は、特に決まっていません。

しかし、当人が直接噂を教えたのが少人数であっても、その少人数から噂が大きく広まる可能性があれば「風説の流布」と判断されたケースもあります。

②「偽計を用いて」

「偽計」とは、「人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用する」こと。
わかりやすく言うと、嘘の情報や不正によって計画的に人を騙したり、勘違いや無知につけ込むことです。

③「業務を妨害」

「業務を妨害」は、「人や会社の仕事を邪魔する」ということ。
営利目的の業務だけではなく、政党や慈善団体などの活動を邪魔することも業務妨害に含まれます。
実際に業務を妨害されなかったとしても、業務妨害を意図して上記の「風説の流布」や「偽計」を行うことで偽計業務妨害罪が成立することもあります。

ちなみに、個人的な趣味活動や、家庭内で行う家事・学習などは業務にあたらないため、偽計業務妨害罪は成立しません。

威力業務妨害罪との違い

「業務妨害」と付く他の犯罪行為に、「威力業務妨害罪」があります。
威力業務妨害罪と偽計業務妨害罪の違いは、以下の通り。

偽計業務妨害罪:風説の流布や偽計によって業務妨害を行う
威力業務妨害罪:威力によって業務妨害を行う
「威力」とは、暴行・脅迫や、社会的地位を利用して圧力をかけたり、集団的勢力を示したりすることをいいます。
区別するポイントは、被害者に知られないように隠れて行われる業務妨害が偽計業務妨害罪、被害者に直接アプローチして行われる業務妨害が威力業務妨害罪ということです。

偽計業務妨害の罰則

偽計業務妨害の罰則は、刑法第233条で「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。
ちなみに、同じく風評の流布や偽計を用いて行われる信用毀損や、威力業務妨害罪も同じ罰則です。

偽計業務妨害罪は非親告罪

偽計業務妨害罪は非親告罪のため、被害者などが被害を告訴しなくても罪に問われうるものです。
被害を受けて訴える場合、公訴時効が定められているため、その期間内に起訴する必要があります。
偽計業務妨害罪の公訴時効は、3年です。

偽計業務妨害罪の具体例

それでは、偽計業務妨害罪の具体例や、実際の事件について解説していきます。

偽計業務妨害になり得るケース

会社や団体に関する嘘や、根拠のない噂を広めることは、偽計業務妨害罪になる可能性があります。
インターネットの発達により、誰もが広く情報発信できるようになっているため、拡散する情報の真偽には注意が必要です。

自然災害・事件事故に便乗したデマ

自然災害・事件事故に便乗したデマには、以下のような例が挙げられます。

・○○社の食品は、原発事故で漏洩した放射能で汚染されている
・海洋事故でオイルを流出させたのは△△社の船らしい
・地震の影響で、××温泉の源泉に汚水が混じったようだ

自然災害や事件事故が起こると、多くの人が不安になり、情報が錯綜してこのような風評被害が起こりがちです。
SNSなどで、注意喚起のつもりで拡散した情報も、嘘であれば偽計業務妨害罪になる可能性があります。

店舗・会社などへの誹謗中傷

店舗や会社に対する誹謗中傷で、偽計業務妨害罪になるのは以下のような噂を広めた場合です。

・○○社ではパワハラが慣習化している
・△△レストランで食中毒が出たらしい

こういった情報の拡散は、攻撃対象となった会社や店舗の評判を下げて株価や売上を低下させたり、クレームの電話対応などで通常業務ができなくなる可能性があります。
実際はそうならなかったとしても、その可能性があると知りながら噂を広めると、偽計業務妨害罪になるのです。

ステルスマーケティング(ステマ)

ステルスマーケティング(ステマ)が犯罪や違反に問われる場合、主に優良誤認などの景品表示法違反にあたります。
しかし、ステマの度が過ぎて、他社の売り上げを低下させてしまうなどの被害が出た場合、偽計業務妨害罪になる可能性もあるのです。

・(A社商品の口コミとして)B社の商品は高くて効果もないので、A社に変えて良かった
・(A社が評論家などに依頼して)B社制作の映画は面白くない。観なくていい

バイトテロ

偽計業務妨害は、社外だけではなく社内から発生する可能性もあります。
俗に「バイトテロ」と呼ばれる不適切投稿が起こった場合、会社はその行為を行った従業員を偽計業務妨害罪に問うことが可能です。

・「○○社でバイトしてるけど、食材の使い回しは日常茶飯事」等、嘘の暴露投稿
・食材・商品・什器などを不適切に扱う写真や動画を投稿

偽計業務妨害の実例・判例

実際に偽計業務妨害罪が認められた判例としては、以下のようなものがあります。

・Youtubeに投稿する「ドッキリ動画」の撮影を目的として、警察官の前で不審者を装い、覚醒剤に見えるポリ袋を落とすなどの迷惑行為を行った

・銀行のATMで利用客の個人情報を盗撮することを企て、1台のATMに盗撮用ビデオカメラを設置。設置したATM機に誘導するため、他のATM機を長時間占拠し続けて他の客が利用できないようにした

・漁場の海底に、海面からはわからないように障害物を沈め、漁網を破損させることを企てた

・デパートの売り場の布団に、16回にわたって計469本の縫針を混入させた

偽計業務妨害罪に巻き込まれないために

最後に、偽計業務妨害罪の加害者・被害者にならないための対策や、もし被害を受けた場合の対応方法についてお伝えします。

加害者にならないために

偽計業務妨害罪の加害者にならないためには、嘘の情報の拡散や、軽いノリでの悪ふざけに加担しないことが重要です。

インターネットの使い方に注意

インターネット、特にSNSでは、誰でも情報を広く発信することができます。
そのため、自分が投稿する内容や、他者からシェアする情報は、しっかりファクトチェックをするのが重要です。
ネット上の情報を鵜呑みにして、風評被害の拡散に加担してしまわないように注意しましょう。

ノリ・悪ふざけの結果を考える

「バイトテロ」は、その投稿をする意図や目的は特になく、単なるノリや悪ふざけで行われることがほとんど。
軽いノリで行った投稿も、偽計業務妨害罪をはじめとする様々な犯罪に問われる可能性があります。

罰金や懲役などの法定刑はもちろん、前科がつくとその後の就職や結婚にも重大な影響を及ぼす可能性があることを知っておくべきです。

従業員教育の徹底

社内から偽計業務妨害の被害を出さないために、従業員教育を徹底することも重要です。
バイトテロだけではなく、宣伝行為の一環として行うステマなども、一定のラインを超えると偽計業務妨害にあたる可能性があります。
適切な指導を実施し、社内全体のネットリテラシーを向上しましょう。

偽計業務妨害の被害者になったら

偽計業務妨害の被害者になった場合、まずは嘘の情報の拡散を止めて被害を食い止める必要があります。
情報の削除とともに、正しい情報をアナウンスして消費者の誤解を解くよう努めましょう。

ネット上の書き込みを完全に削除するのは難しいですが、管理者への削除依頼や加害者の特定、検索結果に嘘の情報が出にくくすることなどは可能です。
削除前にスクリーンショットなどで証拠を集め、後の訴訟や再発防止などに活かしましょう。

偽計業務妨害のトラブルは弁護士に相談を

偽計業務妨害でトラブルになった際は、まずは弁護士に相談しましょう。
特にネット上の風評被害は、スピーディーに被害の拡大を食い止め、投稿者を特定する必要があります。
サイト管理者やプロバイダへの情報開示請求や訴訟手続きは、法律やネット犯罪の知識がないと難しいため、早急にプロに任せるのがおすすめです。
弁護士は交渉のプロでもあるため、後に損害賠償請求をする際にも有利になります。

ちなみに、現在進行形で実害が起こっていて、犯人を逮捕しないと被害拡大の可能性がある場合などは警察へ相談しましょう。

まとめ

偽計業務妨害罪は、人や会社の業務を邪魔する悪質な犯罪行為です。
風評の拡散やステマ、バイトテロなど、軽いノリで行ってしまうようなことも偽計業務妨害罪になり得ます。
特に拡散力の高いSNSへの投稿などは、しっかりファクトチェックを行って情報を精査するべきです。

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