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法律コラム

「プライバシー侵害」はどこから?
過去の事例&被害にあった時の対応策

プライバシー権は、誰もが保障されている基本的人権です。
私生活について知られたくないと思っていることを知られたり、公開された場合、プライバシーの侵害という不法行為になります。

今回は、プライバシーの侵害となるボーダーラインや、実際の裁判の事例を紹介。
ネット上でプライバシーの侵害被害にあった場合の対応方法についてもお伝えします。

プライバシーの侵害とは

プライバシーの侵害とは、人が、他の人に知られたくないと思っていることを知られたり、他者に公開されること。
具体的にはどのようなことがプライバシーの侵害に当たるのか、その定義について知っていきましょう。

「プライバシー」とは?

プライバシー(privacy)の意味は、「個人や家庭内の私事・私生活。個人の秘密。また、それが他人から干渉・侵害を受けない権利」です。(出典:デジタル大辞泉
日本語には一言でこれを表す言葉はありませんが、「私事権」ということもあります。

実は、プライバシーに関する権利は、日本の憲法や法律で明確に保障されているわけではありません。
しかし、日本国憲法第13条で保障された「基本的人権」に含まれると考えられ、プライバシーの侵害は民法の不法行為(民法709条)とされます。

名誉毀損との違い

プライバシーの侵害と名誉毀損の定義を簡単にまとめると、以下のようになります。

プライバシーの侵害:人が他者に知られたくないと思っている、私生活の情報を公開すること
名誉毀損:人の名誉を貶めるような情報(真実でない場合も)を公開すること

プライバシーの侵害と名誉毀損は、公開される内容によって、重なる部分がある場合も別物である場合もあります。
例えば、「Aさんには前科がある」という情報は、本人が知られたくない情報であるとともに、公開することでその人の名誉を貶める可能性が高いです。
しかし、「Aさんの年収は1,000万円」であれば、プライバシーの侵害になりえますが本人の名誉を貶めるとは考えにくいです。

また、医師、弁護士等特定の職業に従事しまたは従事していた者が業務上知り得た他人の秘密を漏らした場合に成立する秘密漏示罪(刑法134条)を除いて、プライバシーの侵害を直接に罰する規定は刑法上存在しません。そのため、これの職業に従事しない者によるプライバシーの侵害は民事上の不法行為にすぎず、損害賠償請求はできても逮捕はできないこととなります。しかし、名誉毀損は刑事罰のある犯罪なので、刑事責任を追及することが可能です。

どこからが「プライバシーの侵害」?

それでは、具体的にどんな行為がプライバシーの侵害になるかを解説していきます。

プライバシーの侵害となる3つの要素

プライバシーの侵害と見なされるのは、以下の3つの条件を全て満たす場合です。

①私生活に関する事実

まず、プライバシーだと法的に認められる情報は、「私生活に関する事実」である必要があります。

「事実」とは真実である必要はなく、真偽不明で本当かもしれないと思われかねないことも含みます。
しかし、誰が聞いてもでたらめや冗談と思われることは、「事実」には含みません。

②すでに公開されていない内容

次に、その私生活の情報がすでに公開されていない内容であることも要件のひとつです。

先の例で言うと、年収を隠したがっている人の情報を広めるのはプライバシーの侵害ですが、自分から「私の年収は1,000万円」と公開している人の情報を拡散してもプライバシーの侵害にはなりません。

③一般的に公開して欲しくない内容

最後に、公開された情報が「一般的に公開して欲しくないであろう」という内容であること。
例として、以下のようなものがこれにあたります。

・前科、過去の犯罪行為
・疾病(持病・病歴)
・身体的特徴
・指紋
・日常生活・行動・住所
・身分行為(結婚・離婚)
・犯罪捜査としての情報(の取得)

上記以外でも「公開して欲しくない」と思う情報は人それぞれですが、それが常識と照らし合わせて一般的であればプライバシーの侵害となります。

プライバシー侵害が認められないケース

プライバシー侵害が認められないのは、上記のいずれかの要件を満たさないと考えられる場合です。
例えば「昨日の夕飯はカレーだった」という情報は、既に公開されていない私生活上の事実で、本人が「公開して欲しくない」と思っている可能性もありますが、その感覚が一般的かというと違います。

また、職場の監視カメラなどは、トイレや更衣室などプライベートな空間に設置されない限りはプライバシーの侵害とならないケースが多いです。

プライバシー侵害と認められた事例

プライバシーの侵害が認められた事例には、以下のようなものがあります。

・小説「宴のあと」で、実在の人物をモデルとした主人公の私生活についての描写→80万円の損害賠償
・派遣労働者がHIVに感染していることを、派遣先会社が派遣元に漏洩→300万円の慰謝料
・会社内での所持品紛失を理由に、従業員に対して身体検査→30万円の慰謝料

上記の事例には、プライバシーの侵害だけではなく、名誉毀損罪や不当解雇など、他の不法行為と合わせての判決となっているものもあります。

また、実際に裁判に発展することは少ないですが、人のLINEやメールを盗み見る、本人の同意なくGPSで居場所を監視する、勝手に家や部屋に入ったり鞄・財布等を開けるといったこともプライバシーの侵害です。
プライベートな時間を共有する家族間であっても、プライバシーの侵害は成立します。

ネット上でプライバシー侵害被害にあったら

最後に、ネット上でプライバシーの侵害被害にあった場合、どのような対応をするべきなのか解説します。

被害にあった時の対応

プライバシーの侵害被害にあったら、まずは情報を削除して被害の拡散を食い止め、それから犯人に対する責任追及を行いましょう。

①証拠を保存する

ネット上にプライバシー情報を掲載されてしまった時には、まずその画面をスクリーンショットで撮ったり、プリントアウトして証拠を保存します。
一刻も早く削除したくなってしまいますが、削除してしまうと後で賠償請求等を行う際に必要な証拠がなくなってしまうため注意しましょう。

②情報の削除依頼

証拠を保存したら、サイト管理者などに情報の削除依頼を行います。
ほとんどのサイトで、プライバシーの侵害などの不法行為は禁止事項となっているため、それに基づいてメールなどで削除依頼を出しましょう。
対応してもらえない場合には、裁判所を通じて「仮処分命令」という強制力の強い削除要請をすることも可能です。

③犯人特定

犯人特定をするためには、情報が書き込まれたサイトの管理者とプロバイダに「開示請求」をする必要があります。
サイト管理者が保存しているIPアドレスを入手し、IPアドレスから割り出したプロバイダに利用者の個人情報を開示させるという、2段階の手続きが必要です。
IPアドレスやプロバイダのログ保存期間は3ヶ月〜半年ほどと短いため、スピーディーに対応するのが重要です。

④損害賠償請求

犯人の特定ができ、住所と氏名が入手できたら、損害賠償請求を起こすことができます。
請求できるのは、プライバシー情報が公開されたことによって生じた損害額や、精神的苦痛の慰謝料。
名誉毀損や侮辱など、他の不法行為も合わせて行われていれば、それに対する請求も可能です。

賠償金の相場は、被害の規模や悪質性などにもよりますが5万円〜80万円くらいです。

プライバシー侵害は刑事罰になる?

プライバシーの侵害は、前述した一定の場合を除いて刑事罰の対象とはなりません。
しかし、同時に名誉毀損にもあたるケースが非常に多く、その場合には刑事罰に問うことができます。
名誉毀損罪の刑事罰は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

スムーズにすすめるなら弁護士に相談を

プライバシーの侵害にあたるネット投稿を削除したい方、犯人を特定して訴え、賠償請求をしたい方は、まず弁護士に相談しましょう。
ネット上の被害の場合、法律の知識がない人が犯人を特定するのは非常に難しいです。
ログの保存期間などの関係でスピーディーな対応が求められるため、ネット被害に強い弁護士への相談をおすすめします。

ネット被害の解決にかかる弁護士費用の相場は、以下の金額が目安です。

・相談料:無料〜1万円/1時間
・着手金:10〜15万円(示談) 15〜30万円(訴訟)
・任意開示請求:10〜20万円
・仮処分命令申立:10〜20万円
・発信者情報開示請求訴訟:10〜20万円
・報酬金:慰謝料の20%程度
・日当:5〜10万円/1日
・実費(交通費など):1万円程度

まとめ

プライバシーの侵害は日常的に起こりがちですが、歴とした不法行為です。
家族など親しい間柄であっても成立するため、常日頃から互いのプライバシーを尊重して過ごすことが重要となります。

ネット上でプライバシーの侵害被害にあったら、まずはネット被害に強い弁護士への相談がおすすめ。
スピード感が求められる手続きも多いため、速やかに相談を始めて対応を考えましょう。

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